ナチュログ管理画面 キャンプ キャンプ 関東 アウトドア&フィッシングナチュラムアウトドア用品お買い得情報
ブログ作成はコチラ
あなたもナチュログでアウトドア生活を綴ってみませんか?

2017年05月10日

成功と失敗 Part2

成功と失敗 Part2


人生初の3000m級雪山登山に挑戦する Part2

Part1は前の記事を参照



成功と失敗 Part2


いよいよピークハントする朝を迎えた。

快晴、無風。昨日の疲れもとれている。
アタックに問題は無い。

ここ涸沢カールからのピークハントはバリエーションルートを除けば
ザイテングラートを経由して白出のコルから左に取りつく奥穂高岳と
右に取りつく涸沢岳、そして北穂高沢を直登する北穂高岳の3パターン。

難易度は、高い順に奥穂、北穂、涸沢になる。
テン場に常駐している長野県警山岳救助隊に質問したところ
ここが初めてなら奥穂は危険だから止めなさいと諭される。

承知して北穂と決めた。ルートは写真の赤いラインだ。

成功と失敗 Part2


どの斜面にもデブリ(雪崩の跡)が見えるが、
北穂沢は2日前に大きな雪崩が起きて1人が直撃を受けたらしい。
幸い命に別状はなかったがかなり下まで流されたとのこと。

その影響でルートはほとんどがデブリの上を歩くことになる。
ま、GWなので既に前日のトレースが残っているだろう。


成功と失敗 Part2


朝6:30にテン場をスタート。
北穂はこの雪渓をひたすら4時間登り詰める。
山頂直下が一番斜度がきつく滑落したら体を止めることはほぼ不可能だ。

雪崩れたばかりでも、再び雪崩れる可能性は否定できない。
デブリの上はできるだけ早く通過するようにする。

登り始めてじきにゴーグルをテントに置いてきたことに気付く。
風も無いので、まいいかと気にしなかった事が後に大変な事態を招くことに。


成功と失敗 Part2


斜度がきついため、あっという間に高度が上がる。

テン場が既に米粒のようだ。
上を見て登っては、下を振り返り高度が上がっていくのを確認する繰り返し。

早い時間なので雪が締まっていて登りやすい。
トレースを外さないようにステップを確実に踏む。


成功と失敗 Part2


中間地点まで来ただろうか。
さらにテン場が小さくなっている。

成功と失敗 Part2


既に3時間が経過。

いよいよ北穂の核心部である最後の急斜面に差し掛かる。


成功と失敗 Part2


角度はこのくらい。
落ちたら止まらないのでアイゼンとピッケルをしっかり使って3点支持で登っていく。

ちなみに、ここで登りで前方の男性が転倒して後ろの女性にぶつかり
その女性が30m滑落した。怪我は無かったようだがショックで山を下りた。

下りの際にも上方にいた女性が150m滑落。
岩すれすれにもの凄いスピードで落ちていったが怪我はなかったようだ。
もし岩に激突していたら死亡事故になりかねなかった。

成功と失敗 Part2


上から見るとその斜度がよくわかる。

成功と失敗 Part2


ようやく核心部を抜けてコルに出る。

頂上まであと少しだ。


成功と失敗 Part2


無事に登頂。

北穂高岳3106m。やったぜ!

成功と失敗 Part2


後ろには雪をかぶっていない槍ヶ岳が見える絶景。

上高地から累計で12時間歩いた者にしか見ることができない景色だ。
本当に素晴らしい。


成功と失敗 Part2


バリエーションルートで登ってくる人もいる。

今の自分には怖くてできない。
ロープワークも必要になる凄い人達だ。


成功と失敗 Part2


山頂に建つ北穂高小屋。
ここでビールも飲めるが下山があるのでコーヒーで我慢。

避難小屋を除けば日本で一番高い所にある山小屋だ。


成功と失敗 Part2


2時間かけて無事に下山。往復6時間の行程だった。

下山中に大きな雪崩が横をかすめていったり、
トラックぐらいの大きな雪の塊が登山者の列を横切って落ちて行った。

3000m級の雪山はやはり危険と常に隣りあわせだということを痛感した。


成功と失敗 Part2


登頂成功を祝して涸沢ヒュッテ名物のおでんと生ビールのセットで乾杯!



しかし、この後に異変が。

突然、両目が痛みだし目が開けていられなくなった。

雪眼炎である。急性角膜炎というやつだ。
あのときゴーグルを取りに戻れば、雪の紫外線を甘く見ていたのだ。
雪は紫外線を80%反射するらしい。
その雪と裸眼で5時間にらめっこしていたのだから当然といえば当然だ。

テントに戻り痛くてなにもできないので夕方6時から翌朝5時まで
11時間寝て眼を休ませるしかなかった。

翌朝、目が開けられなければ自力での下山は不可能だ。
ここはまだ標高2300m。上高地まで健康体でも5時間以上の道のりだ。

ヘリの救助が頭をよぎるが、できれば避けたい。

なんとか視界は6割程度。
白く靄がかかったようだがなんとか見える。
たた、明るい所が眩しくて見えないのと、目を長く開けていられない。

日が高くならないうちに下山を開始した。
50m歩いては眼をつぶって休ませるの繰り返し。

結局、上高地バスターミナルまで7時間かかった。

また、自分の車の運転は眩しくて無理だったので
夜になるまで待ってから出発。

これも30分おきに休憩して目を休ませながらの繰り返し。
何とか自宅に着いたのが朝の4時30分。

すでに外が白み始めていた。



涸沢に滞在中に2人が滑落で死亡。
目の前でも3人が滑落。
雪崩にも遭遇した。
そして最後に自身が重度の雪眼炎になった。

雪山がもう来るなと言っているのか?
それとも、気を付けろと忠告してくれているのか?

いずれにせよ今シーズンの雪山登山はこれで終了だ。

1年間、頭を冷やして考えよう。
でも、きっと、また登るだろう・・・



















同じカテゴリー(登山)の記事画像
厳冬期の木曽駒ケ岳へ
立山縦走
厳冬期の天狗岳へ
積雪期の槍ヶ岳へ
成功と失敗
厳冬期の赤岳へ
同じカテゴリー(登山)の記事
 厳冬期の木曽駒ケ岳へ (2019-01-15 07:00)
 立山縦走 (2018-05-07 07:00)
 厳冬期の天狗岳へ (2018-02-26 07:00)
 積雪期の槍ヶ岳へ (2017-11-14 08:08)
 成功と失敗 (2017-05-08 07:00)
 厳冬期の赤岳へ (2017-03-13 07:00)

Posted by チェロキ at 07:27│Comments(8)登山
この記事へのコメント
ご無事で何よりでしたね。
登頂までは、LINEが有ったのに、その後は無かったので、変だなと思ってました。
登山後にLINEが有ったので無事ではあると確認してました。
こんな事が有ったとは。
昔、面白がって溶接を面を付けずに2時間程して目を焼いた事がありましたが、同じ様な症状でしょうね。
命がけの趣味ですね。
無理せず遊んで下さい。
Posted by koba at 2017年05月10日 08:59
本当にやばかったです…

とりあえず山は終わりです。
これからは海シーズンですね!

宜しくお願いします‼️
Posted by チェロキ at 2017年05月10日 19:31
初めまして^ ^
とても美しい景色を見させていただきました。
毎年この時期の涸沢は考えるのですが、なかなかチャンスがつかめずにいます。しかし、危険とわかりながらも自分の体と目で確かめたくなりますね。

眼は大変でしたね…私も同じ症状になったことがありますが、痛みは無くなっても、一時的でなくかなり長期に眼は傷ついているようです。機会があれば眼科の受診をしておいてもいいかもしれませんね〜お大事にされて下さい。
Posted by みーパパみーパパ at 2017年05月10日 22:10
はじめまして

やはり、眼科に行ったほうがいいのですね。

今日、また目が痛くなり
まだまだ治ってないんだなと思いました。
Posted by チェロキ at 2017年05月11日 01:17
素晴らしいレポートありがとうございます
自然への挑戦、融合なのか、凡人にはわかりませんが、一般のサラリーマンでも、ここまで、できるというのは、感動ですね
でも、三浦でいつも自然体でやってる野営のノウハウが生きてますね❗️
素晴らしい風景の共有に感謝です
多忙な中の投稿に感謝です❗️
引き続き、楽しませていただきます
Posted by 鶴ヶ峰 at 2017年05月11日 23:15
鶴ヶ峰さん

お久しぶりです!

なぜか危険と隣合わせな非日常の雪山登山に惹かれてしまいます。
刺激が欲しいのでしょうか?日常が退屈なんでしょうか?

夏山シーズンにはあまり興味がありません。
困ったもんです(笑)

たまにはKTCに顔出そうかな〜
全然やってないので下手くそになってますよ。
その際には、お付き合い下さい。
Posted by チェロキ at 2017年05月12日 08:32
先日は突然お邪魔して済みませんでした。
リアルなお話が聞けて大変参考になりました。
またお見掛けしたらお声をかけますね。
此れからもブログ楽しみにしております。
Posted by じゅん at 2017年06月05日 21:36
じゅんさん

コメント気付かずすいませんでした。
最近ブログさぼってますもんで…

声掛けていただき、ちゃんと読んでくれてる人がいるんだ!とリアルに実感しました。
嬉しいものです。

また、どちらかでお会いした際には声掛けくださいませ。
Posted by チェロキ at 2017年06月19日 19:37
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
成功と失敗 Part2
    コメント(8)